√セッテン

「それで、なんか理由があるんじゃないかって調べたら、長谷川さんと山岸さんのケータイの最後の発着信のヒトが、みんな死の待ち受けが表示されてたの」

山岡は言って、山岸絵里子のケータイを握りしめた。

森先輩も自分のケータイを取り出し、画面を見ようとしたが、ぎゅっと抑えて伏せた。

山岡が悲しそうに続けた。

「絵里子が最期にかけた電話は私、沙織は……」

「長谷川沙織は?」




「長谷川さん……充に発信してたの」


森先輩が切り出した。


「死んだ甘川先輩のケータイに?長谷川が?」

「そう」

「なんで?全く接点がない」

敦子が場の空気を読めよ!という目で俺を見てきた。

「つまり、甘川充の最期の発信は長谷川、着信は森先輩ってことだよな」

森先輩の目が潤んでいた。

「長谷川さん、もう死んだ充に何度も電話してたの。それって、それって充と何か深い繋がりがあったってことでしょう?」

長谷川、弓道部じゃないよな。

友達関係あったなんて話は、俺の耳には届いてない。

河田の耳には入ってたかもしれないけど。

「充が死んだ日、私、いつもの時間に連絡が取れなくて心配して何度も電話したの。だけど充……」

その時充は……と、森先輩はそこまで言って涙で喉を詰まらせた。

「敦子」

「な、何?」

「俺、カロリーメイトしか食べてなかった、俺もカレー食べていいか?」

敦子は困った顔をしたが、ついでに飲み物を持ってくる、と俺の腕を乱暴に引っ張った。

敦子の部屋のドアを締める。

階段前の踊り場で、敦子が俺を睨んでいた。

「ちょっと、潤。突っ込みたい気持ちも、はやる気持ちも分かるけどぉ、先に言っておくね。
森先輩の気持ちも考えてモノ言って」

「俺は今、気を利かせたつもり」

「それがカレー食べたい、な訳?」

敦子は頭を抱えて俺を見た。