√セッテン

「潤、お昼だよ」

敦子の声で目が覚めた。

「また寝てたんでしょ、先生に怒られても知らないよ」

敦子は弁当を俺の机の上にのせ、前の席に座った。

「………………」

「敦っちゃん、ダメダメ、まだ黒沢再起動してないから」

河田は笑いながら俺の机の横に来て、隣の席に腰掛けた。

「それでね、3限の時の話の続き、配布してるホムペってあるじゃん」

河田が真剣に聞いてくれるだろうから、問題があるならあとで河田から聞くとしよう。

「うっそーマジで!?」

「本当だって言ってたよ。河田君もアクセスしてよ」

うつら、うつらとしている途中で、2人の高い声が頭に響く。

「うるさい、昼くらい……」

少し静かにしろ、と言おうとすると、自分の言った言葉で固まる。

「そうだ、昼、呼び出しくらってた」

約束を思い出した。

山岸絵里子に呼び出しされていた、たしか、屋上。

敦子も河田もきょとんとして俺を見上げた。

階段で昼飯を食っている女子をすり抜けて、屋上へ向かう。

鍵の掛かっていないドアを開けると夏の風が吹き込んでくる。

うちの高校は屋上から海が見えた。

夏は屋上から、海で行う打ち上げ花火が、混雑知らずで見ることができる。

俺は混雑大嫌いだから、人が少ない屋上はよく逃げてくる場所だった。

「あ!黒沢君」

声をかけられて振り返る。

山岸絵里子がそこにいて、俺を見ていた。

「あのね、どうしても聞きたいことがあって」

俺はすることもなく、校庭の方を見て時計を確認して、視線を戻した。

「あのね、いつも気になってたんだ」

何を、と聞きたかったが、それより山岸絵里子の手に握られたケータイ電話が目に止まった。