√セッテン

俺は電車に乗り、敦子の家のある円茉莉駅で降りると、街路樹が植えられた閑静な住宅街を1人歩く。

コンビニで買ったカロリーメイトを出して口にくわえて、イヤホンを耳に詰めた。

色々な仮説を立てる。

だが、その度崩れる。


仮説が崩れる原因は、根本がはっきりしないからだ。

呪いとか、そういった数値にならないものを元に

仮説を立てるのはやりにくい。

そう言うときは、答えになってみる。


俺は『負の数-1だ!!』


-1だからこの式は成り立つ!!俺は成り立つ!

逆算して計算してみろ、ほらちゃんと計算に辻褄があうじゃないか。

……という感じの、乱暴な演繹法なんだが。

正攻法が通じないときは、少し角度を変えて見るっていうも大事な捉え方だ。

「誰がこんなことを、はじめたのか……」

ふと頭によぎったのは、森先輩の待ち受映っていた、あの女。

この件に関係無いわけはないだろう。

「そいつを仮に、iとしよう」

iはなぜ、こんな数式を作った?

―それはもちろん、自分を明らかにしたいからだ。

iはなぜ、ケータイなんかを使ってる?

―誰でも持ってる。みんな知ってる。もっとも普及率の高い伝達手段。またはiもケータイを所持しているから。

iはなぜ、人を死に追いやろうとする?

―人を恨んでいるから、愉快犯、殺人狂……