俺は堀口俊彦と電番とメアドを交換して、足早にムーントピックから出た。

渋谷景に残された時間はあと1日。

心配だが堀口俊彦が守ると言った。

彼女のことは、彼に任せるほかはない。

それにあの状態の渋谷景が、俺の話をまともに聞いてもらえるとは思えなかった。

色々と質問にうるさい河田に、授業中もそのくらい質問しろ、と投げつける。

「俺、これから敦子の家に行くから」

「えっ、お前いつのまに主義代え?」

「違う」

「何が違うんだよ、おい。もう12時回ってるんだぞっーやらしー!潤ちゃんのスーケーベ」

俺は無視して私鉄の河田に背を向けた。

結局、ムーントピックには何も残っていなかった。

あんな場所でそろって死ぬなんて、なにか密談でもするつもりだったのだろうか。

「そうだ、河田!」

「なんだよ、このムッツリ」

「立幸館の3年ってお前の守備範囲?」

「女子限定~!」

「さっきの渋谷景と、ムーントピックで死んだ池谷美保のこと、詳しく調べられるか?」

「え、探偵ゴッッコまだやる気?」

「ちゃんと調べてきたら、敦子とのデートを見積もってやる」

河田は首を捻った。

「いやぁ、テスト前だしなぁ、それだけじゃちょっと足りないなぁ」

「数学と物理のノート、テスト範囲コピーさせてやってもいい」

「よしきた。まかしといて。俺、元カノ立幸館だし余裕♪」

「ちなみに、ろくでもないネタ持ってきたら、全部却下だからな」

「やーまかしとけって♪ じゃな!」

河田は言って、手を振った。