堀口俊彦は言って、はにかんで笑った。

「じゃ、またな、進学が決まったら、お前の進学の相談くらいのってやるよ」

「それは助かります。面接、がんばってください。堀口さんなら大丈夫だと思いますけど」

「せいぜい、密室での面接にはならないようにって期待してるよ」

堀口俊彦の言葉に、思わず苦笑した。

「これ、ありがとうございます」

片手を上げて俺の言葉に答えると、彼はタクシーを拾って去った。


手元の封筒とUSBメモリーを見つめる。

俺はぼんやりと、歩きだした。


どこまで行こうか。


今だったら、どこまででもいけるような気がした。


人の流れと逆行して、海へと向かう。

花火の会場からは離れていて、人は少ない。

砂浜に降りると、海の向こうから、波の音が押し寄せてくる。

暗い空にぽっかりと月が浮いている。

花火を見ていた時には気が付かなかった。


俺は見上げて、目を閉じた。

「霧島さん」

どこにもいない人の名を呼ぶ。

「俺、文才はありませんけど、あなたの記事を俺が完成させていいですか?」


海からはなんの返事も帰ってこない。

当たり前のように、波が打ち寄せられ、引いていく。


左手奥の海岸で、破裂音がして、パン、と小さな打ち上げ花火が上がった。

わぁ、と花火を打ち上げた人たちの歓声が聞こえた。


それが答えのような気がして、俺は1人納得して身を翻した。