白砂海岸



打ち寄せる波が黒い。



まるで、蔵持七海の黒髪のようだった。

砂浜は彼女の肌のように白い。


年に一度の花火大会は

二条だけでなく遠くからも沢山の見物客が集まる。

周囲では警備員の規制のアナウンスが、途切れることなく続いていた。


「終わったね」

「あぁ」

「うん」

山岡も静かに頷いて、続けた。

花火大会が、ではなく、死の待ち受けを廻る15日間のことだ。

「私は、怖かったり、辛かったり、なくしたものも多かったけど、この先ずっと、忘れないよ」

「私も」

山岡と敦子は、2人してそう言って頷いた。


「大切な、私の過程だから」


2人の言葉を聞きながら、オレンジジュースを口にする。

甘酸っぱいオレンジが口の中に広がっていく。


「潤も、忘れられないよね」

山岡の言葉に、俺は曖昧に笑った。


ひゅー、と耳の中を突き抜けるような音がする。

「あ! はじまったぁ!」


……忘れていいなら、忘れたいけど?


問題に挑みながら、すでに死んだ出題者に恋をしていたかもしれない、なんてな


耳を突き抜けた音は、高い空で大きな光の花を咲かせた。

こんなに大きく咲くなら、海の向こうからでも見えるだろう。