混雑した人の流れの中、山岡が俺の手をぎゅっと握りしめる。

海岸に近づくにつれて、風景が変わってくる。

ただ今日は、人が多くて本来の静かな白砂海岸とは思えない。

「敦子、ちょこまかするなよ、混んでるんだから」

りんご飴を口にしている敦子の腕を引くと、してないよーと敦子が反論した。

「てか!なに……2人とも手繋いで!」

斜め後ろから河田が声を上げた。

「いや、山岡、歩くの遅いから迷子になるし……」

「じゃー変わろう!俺がエスコートしてあげる!チェンジプリーズ!」

「両替かよ」

速効ツッこむが、河田は無視した。

変わってもらうかと声をかけようとしたが、山岡は歩調を早めて俺の手を引いた。

「敦子、ヤキソバとじゃがバタどっちがいい?」

敦子と山岡は視線を合わせて

それでお互いにこ、と笑って小走りを始めた。

「あ、ちょ、2人とも!」

河田の声が背後から聞こえる。

「河田君は、新しい恋みつけてくださーい!」

敦子と山岡は笑いながら、河田を撒いた。

「千恵はそっちの手譲らないだろうから、私はこっちの手」

「おい、俺が何もできないだろ」

「照れてる照れてる!両手に花じゃん!学校始まったらまた噂になるね、黒沢! お前も河田と同じか!とかね」

敦子は楽しそうに笑って腕をからめとる。