翌日の午後

16時を過ぎたが

日はまだ高いというのに、俺と河田は外で待ちぼうけを食らっていた。


「おまたせー!」

堀口俊彦から来ていたメールに返信すると、敦子の声がした。


果たして、俺が飯島家に着いてから、何時間経ったのか。

すっかり忘れたころに、敦子の声が玄関から飛び出てくる。

敦子をジロリと睨みつけた。

「大体、準備に時間かけすぎるんだお前ら」

文句をいうと、さっきまで同意だったはずの河田がコロっと敦子の味方をした。

「いいじゃん、浴衣萌え! 可愛い!」

「ねー、やっぱり堀口さん今日来れないって?」

「あぁ、今日は推薦の面接練習があるんだって」

堀口俊彦と、その後の死の待ち受けについて情報を交換していたのだが

花火を一緒に見に行こうという誘いもかけていたのだ。

残念だが、と断わられたが。

あの後、死の待ち受けは、まるでウソだったかのように消えた。

堀口俊彦の周り、そして俺が把握していた、立幸館のキョウコ周辺に発生していた待ち受け。

そのどちらも消えてしまったという。

一時期は皆、真剣に恐れていたというのに

1日ですっかり、ただの「オカルトフラッシュ待ち受け」だった

という地位まで落ち込んでいた。

しばらくたてば、冗談や脚色も混じった都市伝説として昇格するかもしれない。

「残念だなぁ、堀口さんにも浴衣見せたかったのに」

残念そうな敦子の後ろから山岡が出てくる。

ハイテンションな敦子と河田を前において、俺は山岡の方へ振り返った。

手を出すと、山岡が嬉しそうに笑った。

「ただでさえ歩くの遅いのに、下駄とか不慣れで」

手を取って歩き出す。

「河田君も、特別に許可が出ただけで本当は安静なんだよね?」

「まぁ、いいんじゃない?あいつは。敦子といられれば次の日死んでも」

山岡は楽しそうに笑ったが、ちょっと可哀想かも、と小さく付け足した。