「私のケータイに表示されてるこのフローリング?みたいなところ……どこだろうね」

山岡は自分の待ち受けを指して俺に見せる。

「どこにでもありそうだよな、こんなとこ……」

放射線状に伸びる線のようなもの、これは床に違いない。

表示されている待ち受けは艶のあるフローリングで体育館に似ていた。

奥が明るいってことは、そこに照明とか、舞台とかがある可能性があるってことだよな。

画面の左側の黒い影

これは写真を撮ったときに指でも入ったのか、それとも人影……か?

俺はじっとライトダウンする画面を睨んだ。

「にしても、暗い写真だよな。奥の明かりが差し込んでないと、なんだか分からない」

「そうだね。かなり暗いよね、この写真のとこ」

「やっぱり、夜の体育館とか?」

「……ホ、ホラーだ、ね」

「長谷川のケータイ見てみるか……」

プライバシー侵害だと思いつつも、俺は長谷川沙織のケータイを開いて、着信履歴を覗いた。

長谷川沙織の着信履歴は、大体が「家」「山岡」「山岸」「美鶴」「櫻井」「未登録」に集約していた。

山岡と山岸は分かるけど、櫻井?

結構どこにでもありそうな名前だから西高の誰かか?

「櫻井って、沙織の彼氏だよ」

山岡が俺の疑問に気づいてフォローをくれる。

「ウチの学校?」

「うん、イッコ下。1年生だよ」

「美鶴って?」

「さぁ……?私は知らない、他校の友達じゃないかな?サークルの友達とか……」

次は発信履歴だ。

発信履歴もそんなに変わらなかった。

しいて言うなら、「美鶴」「母」「父」といった友達や家族への電話が増えていた。

大して珍しい履歴ではなく、俺はアドレス帳を覗いた。

さっきの数倍、人のプライバシーに土足で踏み込み、嫌な気分になった。