売店の隣の休憩所で敦子にレモンティーを渡す。

「大丈夫だよ、山岡はお前のこと嫌いになってなんてない」

敦子は少しやり場のない目線を手元において目を閉じた。

「私……千恵に嫌われちゃっても、ちゃんとイーブンになりたかった」

「あそこまですれば、ちゃんと伝わるよ」

「千恵は、頭いいもんね……」

敦子は言って、レモンティーにストローを指した。

「……うん! 私がしたいと思ってたことは、ちゃんとできた」

そうだな

2人にとっては、死の待ち受けの他にも、はっきりさせておきたいことだったのかもな。

「敵に塩を送るって、言わない?」

俺の言葉に、敦子は顔を上げて、俺を見た。

「うさぎと亀だよ。私は、スタートしようともしない、亀のおしりを叩いただけ。走り出してからはもう塩を送ったりしないもん」

「本当、お前のそういうトコロは尊敬するよ」

泣き顔から転じたその笑顔に、思わず苦笑する。

頭にポンと手を置いて立ち上がる。

「気をつけて帰れよ」

敦子は、少し間を置いてから、俺が叩いた頭に手をせて、小さく微笑んだ。

「ねぇ、潤。明日、晴れるといいね」

「晴れるだろ」

敦子は、いつも通り、そーだね、と言って微笑んだ。