あの色素の薄い瞳、あれは蔵持七海と血を分けた証だったんだ。

彼ははじめから蔵持七海と同じガラスの瞳で俺を見てた。

『黒沢くん、キミは夢ってあるかな』

俺に夢がないと笑った霧島悠太。

彼には夢があって、愛する人がいて

夢があれば、あると逆に苦労すると、苦笑していた。

『夢を持って生きていて、突然それが叶わないと知った時の絶望、自分の可能性を信じ切れなくなった瞬間、これほど悲しいことはないよ』

「……あなたは、最期まで自分の思いを信じて生きていたじゃないですか」

たった1つの、自分の中の答えを信じぬいて。

愛しているから信じたいと、信じるのが愛なんだと

「蔵持七海のためだけに」

霧島悠太が日本で遭遇した父親の新しい家族こそ、蔵持家だったのだろう。

蔵持家は、霧島悠太とその母親の登場で破綻した。

√の女が、霧島悠太が蔵持七海に固執する理由を贖罪や呪いだと言ったのは、このことなんだろうか。

蔵持七海の母親は、同じ人間を愛した人を呪い殺して

蔵持七海は、同じ血を持つ兄を殺した。

お互いが、自分の父親を軸に、大切な家族を削り合った。

血の繋がりで出会い、愛され、拒絶された。

死を越えてまで届けようとした

霧島悠太の深い愛情は、蔵持七海には届かなかったんだろうか。

もし伝わらなかったとしたら、俺が代わりに伝えてあげたい。

彼は何者にも屈しなかったし、誰かに言われて蔵持七海を愛していたわけではないこと

ほんの少ししか一緒にいなかった。

だけど俺には、分かった。


『七海に会いたい。そして助けてあげたい。七海は僕の大切な……』


隣で泣いている敦子を見つめていると、複雑な気持ちになった。


『大切な……人……だから』


霧島さんなら、家族を特別な感情で愛することができますか?

そう言った時

あの時、霧島さんは、何て答えてくれたんだっけ。

「……」

霧島悠太と蔵持七海の関係は、俺と敦子と似ているように思えた。