「霧島さんってね、お父さんを追ってお母さんと二条に来たんだって」

敦子が突然、話を切り出した。

「でも、お父さんはもう別のヒトと結婚してて、そんな中でお母さんも亡くしたんだって」

√の女が呪ったと口走っていたが

その辺りの真偽は全く分からない。

変わらないのは、蔵持七海も、霧島悠太も孤独になったということだけだ。

「孤独って誰かに分かって欲しいし、寂しさは埋めて欲しいけど、やっぱりその気持ちは、誰にも分からないよね」

人の心は、そんなに簡単には分らない

分ってあげたいと思っても、叶わない。

「霧島さんの心を癒してくれたのは、蔵持さんだったんだね。だから、命を賭けて守ろうとして、信じようとしたのかな」

ポツリ、と敦子が呟いた。



「黒沢、飯島」

2人揃って顔を上げると、堀口俊彦がいた。

「堀口さん」

「大丈夫か、お前たち」

「おかげさまで、重傷は霧島さんが全て引き受けてくれてます」

「山岡には会ったか? まだ目は覚ましてないけど、大きな損傷はないみたいだ。霧島さんが抱えて落ちたからクッションになって大事にはいたらなかったらしい」

「√の女は」

「……分からない。まだ、死の待ち受けが表示されてるヤツを確認してない」

「そうですか……」

俺は自分のケータイを見て、死の待ち受けが表示されていない事を確認した。

表示されたら、あいつは俺のところにやってくる。

そしてカウント0が表示されたヤツのところに赴き

苦しみと悲しみを散布するのだろう。