目を覚ますと、病院だった。


イスに座って、敦子が黙って俺を見ていた。

「起きたね、よかった。一応若っちが病院行った方がいいからって、ここ病院」

起きあがると、少しクラクラする。

グレンチェッカーの後遺症がまだ残っているんだろうか

「水飲んで、脱水症状だったんだから」

「ん……そうだ河田は? 」

「河田君は大丈夫。ビビったよ……108号室行ったら、河田君が倒れてて、なにかのジョークかと思っちゃったけど……すぐ先生がきてくれて、万事休す! 一番ひどい傷は、切り傷と、あと脱臼だって」

「そうか、河田の生死、確かめられないまま、飛び出したから」

「大丈夫、今は意識もあるって」

敦子は言って、視線をおもむろに下げた。

長い睫が、瞳に影を落とす。


「山岡と霧島さんは?」

敦子は、一度大きく口を開けたが、まるで生気を吸われたかのようにその口を閉ざした。

「千恵はね、奇跡的に打撲が数カ所で済んだんだって、でも……まだ、意識は戻ってなくて」

そして、間を開けて、敦子は続けた。

「霧島さんは、集中治療室」

敦子の瞳から、じわりと涙が浮かんだ。

零れ落ちる前に、敦子は人差し指の腹でこすって消す。

「でももう……ダメかも……って」

敦子は顔を伏せて、今度は涙を頬に落とした。

「山岡のケータイは? 」

「わかんない……霧島さんと千恵の傍には落ちてなかった」

時刻は11時55分

俺が√の女に引きずられ、屋上に繋がれたのが何時か分からなかったが

もう、最後の日の、昼にさしかかろうとしていた。