急に敦子が丁寧な話し方を始めたので、会話の動向を見守っていると、敦子は山岸絵里子の母親だ、と口パクして伝えてきた。

とりあえず、山岸絵里子のケータイはまだ解約されてないんだな。

「潤君……」

「何?」

山岡が不安そうに俺のシャツを引いた。

手は酷く青白く、血の気が引いていた。

「やっぱり、死んじゃうんだ、この待ち受け」

山岡は壊れるのではないかと思うほど、ケータイを握りしめていた。

警察に行って事情説明しても、偶然とかそういうオチで片づけられちゃうんだよな。

「……大丈夫だ」

どうして?と山岡は聞いてこなかった。

とにかく考えることしかできないんだ。

今は。

「必ず答はあるはず」

「うん。そうだね……死ぬのを待つなんて嫌」

山岡も言って俺の手を掴んだ。

山岡は俺から手をほどき、自分のケータイ画面を見つめる。

15と記された数字も画像も変らないままだ。

「1つ分かったことがあるよ」

「何?」

「15秒で死ぬ、15分で死ぬってことじゃない」

山岡は死の待ち受けが表示されてからそんなことを考えていたのか、俺に画面を見せてきた。

「あと考えられるのは、15時間後、15日後」

15時間……

「朝にはこれが表示されてたから、15時間後っていうと夜の9時くらい……だと、思う」

気づけばもう夜の7時半を回っていた。

「あと、1時間半……」

山岡はささやく様にそう呟くと、時計を袖の中にしまいこんだ。