ゴトン、とケータイを手から落とすと、手が震えた。

ケータイには血がついていた。

長谷川沙織の血に違いない。

「なんで長谷川は山岸の通夜で、相談しなかったんだ……」

「多分、私たちみたいに、半信半疑だったんだよ。だって……普通信じられないよ、こんな、ただの待ち受けで、死ぬなんて」

敦子は青ざめた顔で俺を見た。

「山岡も、このままだと死ぬってことか」

「先輩も死んじゃうよぉ」

俺と敦子が知っているだけで、次の死のカウントダウンが始まっているのは2人。

だが、知らないところで、実はもっといるのかもしれない。

「このケータイ、借りよう。長谷川の母親になんとか頼んで……カウントダウンとか、原因が分かるかもしれないだろ」

「そ、そうだね。じゃあ、山岸さんのケータイも……もう、解約しちゃったかな」

「敦子、山岸の電話番号分かるか?」

「敦子は持ってない。でも千恵ちゃんなら知ってるよ」

聞いてくる、と敦子は言って廊下へ飛び出ていった。


「え?絵里子の番号? うん、分かるよ……まだ……消せてないから」

そう言ってカバンの中のケータイを探し始める山岡。

母親は、父親に泣きながら電話をしていた。

長谷川沙織自身は、外の救急車に乗せられていた。

長谷川の母親もすぐ家を出て病院に向かうだろう。

俺たちは、とりあえず連絡先をメモし、ダイニングテーブルに紙を置いて家を出た。

どう考えても、お邪魔しましたなんて言える状況じゃなかった。

「メモできる?090-5×29-8×15……」

「090-5×29-8×15……ね、オッケーかけてみる」

敦子は言って通話ボタンを押した。

何回かコールして、通話が始まった。