「お前、誰だ」

「私? 分からないの? 潤が一番よく知ってるのに」

山岡は悲しそうな顔をしてみせて

それからゆっくりとベッドの上に乗って俺に近づいた。

ギシ、とベッドが音を立てる。


「潤は私に名前をくれた」

近づいてくる顔



「私のことを、√の女って呼んでたよね?」

山岡は俺の首に手を伸ばした。


手を振り払おうとするがその手を掴まれる。

華奢な山岡の手からは、考えられないほどの強い力に腕がギリ、と嫌な音を立てた。

「っ……」

首に手をかけられたまま、山岡の顔が近づいて唇が重なった。

ベッドから山岡の体が滑り落ち、押し出されるように俺も床へ倒される。

ガン、と思い切り肩と頭をあてて、苦痛を漏らすが、声は山岡の唇に声は吸い込まれた。

首にかけられた手に力が加わる。

「……!」

やめろ、と上げた声も山岡の舌に巻き取られる。

「……!」

力を込めて、思い切り突き飛ばすと、やっと唇が離れた。

息の荒い俺と対比して、山岡は平然としてこちらを見ていた。

「どうしたの潤。あんなに私のこと知りたがってたのに」

「お前どうして山岡の中にいる、山岡はどうした!」

「どうして? 潤だって知ってるでしょ、密室空間に、私は存在できる」

山岡は服についた汚れをはたきながら立ち上がった。