河田のヤツ……

どっかほっつき歩いてるのか?

電話にも出なかったしな。

思わず舌打ちをして、ドアノブに手をかけると山岡が俺に手を重ねた。

「行かないで、潤」

「河田にしっかりお前を守れって言ったんだ」

山岡の言葉を振り切って

ここにいろ、と言って病室を出る。



108号室は病棟の角だった。

ドアノブをひねって中に入ると、もぬけのからの山岡のベッドと、ひっくり返った丸椅子

「河田、まさか山岡を放って1人で学校行ったんじゃないだろうな」

額を手の甲で擦って汗を拭いた。


少し熱い、と感じたのは窓が閉められていたからだった。

ふと、ベッドの間の仕切りが気になった。


山岡の病室はベッドが2つある中部屋。

もう1つのベッドは使われていなかった。

昨日の深夜見たときは、間仕切りもされていなかったはずだった。


白いカーテンを破るように横に引く。

一気に広がった視界に、鮮烈な色が飛び込んできた。