救急隊員のかけ声と、動きが

まるでスローモーションのように流れる。

ドクドクと、心臓がうるさい。

「潤、顔が真っ青だよ」

「…………」

敦子の言葉に返答もできないまま

階段の下へ虚ろな視線を投げると

山岡と長谷川沙織の母親が、まるで母娘のように抱き合って不安そうに涙を溜めていた。

俺は気持ちを落ち着かせ、長谷川沙織の部屋へと入った。

部屋の中からドアを見ると、ドアから擦れた血の跡が線を残していた。

自殺する前に、暴れてどこか傷を負って、そのままドアから離れ、勢いで照明から首を吊った……

ということだろうか。

部屋に鍵がついていたし、中には長谷川沙織しかいなかったのだから、本人がつけた痕跡に決まっているが。

「潤……長谷川さんのケータイ、どこにあるかな」

敦子が急に声をかけてきた。

散々泣いてやっと落ち着いた敦子は、室内に踏み入るのをためらいながらやってくる。

「ケータイ?死の待ち受けが長谷川のトコにも出てなかったかってことか?」

「そう、こんなことになるとは思わなかったけど……それを確認しに来たわけだし……」

敦子は言って、部屋を物色しはじめた。

男の俺より、女の敦子に触れられた方が、長谷川沙織もいくらかマシだろうと、俺は視線を床へ向けた。

下げた視界に、ケータイが目に入った。

拾い上げる仕草が、氷に触れたかのように止まった。

「…………待ち受け」

俺の言葉に敦子が振り返る。

待ち受けにパっと明かりが灯った。

黒い背景

赤い血文字で書かれた"0"

まるで脈のように、ゆっくりと点滅していた。

「……死の、待ち受けだ……」

敦子の言葉には、恐怖と共に不安が滲んでいた。