「長谷川さん!」

敦子がドアノブを捻るが、鍵がついていた。

何度かドアを叩いて呼ぶが、反応がない。

長谷川の母親も体勢を立て直し呼びかけたが、中からは反応が全くない。

鍵は簡易なもので、硬貨で解除できるものだった。

敦子が鍵を解除して、ドアノブを捻る。

「入るよ、ごめんね、どうしても話がしたくて……」

敦子はドアを解放した途端、固まった。

「敦子?」

顔を出して覗き込む。

視線が泳いだ。


そこには長谷川沙織がいた。


ただ、異様な光景だった。


部屋の中央には、UFOみたいな照明がぶら下がっていて、その先には学校指定のシャツが結びつけられてつながっている。

さらにそのシャツは、首に巻き付いている。

長谷川沙織は自身の重みにゆらゆらと揺れていた。

床には擦ったような血の跡

敦子の足元から引きずるようにして、ゆらりゆらりと揺れている長谷川沙織の下まで、薄く続いていた。

「イやぁああああああああああ!!!」

敦子が遅い悲鳴を上げる。

苦しそうに歪む長谷川の顔が、ぶらんと照明の傘の下で固まっている。


ゆら ゆらゆら……と、揺れながら。


「潤君っ」

下から山岡の声がした。

「来るな!!」

迷わず声を張り上げる。

「救急車……警察……とにかく人を呼んでくれ!」

視線を下げると、長谷川沙織の母親はまるで蝋人形のような真っ青な顔をして、口を半開きにして立ちつくしていた。