√セッテン

手伝いながら、俺はライブハウスの中の、真っ暗闇を睨んだ。


少し鳥肌が立った。


閉じこめられたからか、ライブハウスの暗闇に少し抵抗を感じているようだった。


頭がクラ、とする。


無理して動き回ったツケなのか、病室での頭痛がまたやってきた。

30分ほどして、霧島悠太が雑談を切った。

行こうか、と静かに言って、アムリタの奥へ視線を投げる。

俺は霧島悠太が持ってきた工具入れを片手に立ち上がった。

「僕が先陣を切るよ、次に黒沢君……飯島さん、堀口君でいいかな? 」

「そうですね俺は最後の方がいいです。これで出入り口確保してから移動しますから」

堀口俊彦は手にしたガムテープを持ち上げて俺たちに視線を投げる。

「じゃあ行こう。足元を注意して、異常があったらすぐ知らせるようにね」

全員が黙って頷く。

口元にハンカチをあてて、暗闇の店内へ入り込んだ。

カチ、と懐中電灯をつける音がすると同時に、俺も店内に足を踏み入れる。

天井は吹き抜けのようになっていて、敦子の言った通り、ガラスの天窓になっていた。

後ろから敦子が入ってきて、俺のシャツを掴む。

歩きにくいが、離れていられるよりマシだ。

振り向くと、背後で堀口俊彦が入り口が閉まらないように鍵部分にガムテープを張り、ドアをテープで固定していた。

「あ、そこ……私が割ったガラスが落ちてるから、注意して」

「了解」

上空から、開かれたドアに向かって、ぬるい風が流れ込んでいるのが分かる。

スタッフ用の通路は、よどんだ空気もいくらか薄れているように思えた。

壁は黒く、叩くとコン、と鋼の質感を返してきた。

シャープな外観のアムリタだが、内装もモノクロで纏められた近代的なデザインで満ちている。