「登ってみるか」

「私登るよ、どう考えたって、私が一番身軽だし」

敦子は嬉しそうに言って格子に足をかけた。

「待て、お前足怪我してるんだから……」

俺の言葉を受けて、堀口俊彦が敦子へ視線を投げた。

「飯島、俺の肩、乗れるか? 」

堀口俊彦の言葉に、一瞬首をかしげた敦子は、あぁ、と頷いた。

かがんだ堀口俊彦の肩に肩車でもするように敦子は乗る。

ひやひやして見上げていたが、落ちる心配はないようだった。

「2階建てとかじゃなくてよかったよ」

さすにがにそんな高さがあったら、堀口俊彦の肩に足をかけて登っても、屋根の上に登るなんて不可能だ。

「窓あるよ!」

上から敦子の声がした。

「しかも、ラッキー!スタッフ出入り口の真上から、廊下一直線ガラス戸だし!」

「敦子!あったのは分かったから降りて……」

声を上げて、止まった。

足をかける場所がすくないこのコンクリートの箱の上からどうやって降りればいいのか、ということ。

「危険だな」

堀口俊彦が俺の言葉をくみ取って呟いた。

「飯島、ガラス戸は開閉できるタイプか? それとも嵌め殺しか? 」

堀口俊彦の言葉に、数秒してから敦子から返答が帰ってくる。

「1カ所、開けられるとこがある。あとは嵌め殺しみたい。…………ねぇ」

「どうした」

堀口俊彦が短く答えると、上から敦子の顔が出る。

「ガラスを割れるものとか投げれられる? 」

敦子の言葉に、コンビニへ走った。