1人にしておくのも危険なので、俺はゆっくりと後を追った。

裏に回る途中で、落ちていた雑誌を拾う。

雨に打たれてくしゃくしゃになり、ふくれあがっていたが、それはアルバイト情報誌のOLIVEだった。

色は、薄い緑色。

「…………」

拾い上げた雑誌をまた地に落とす。

「あったー窓あるよー」

敦子の声がして、霧島悠太たちがこちらへ向かってきた。

市松を模した窓には、格子がはめられていてた。

頑丈な作りだった。

隣にはSTAFF ONLYと書かれたドアがあったが、入り口はドアロックシステムになっていて電卓のように数字が並んでいる。

「まるで牢獄じゃん」

敦子が言って窓の格子を掴んだ。

俺は窓からドアへと視線を投げて電子ロックを確認した。

「しっかりした作りだな、本当に。貸金庫かっていうんだ」

堀口俊彦はイブハウス全体を見渡しながら俺を見た。

「だめだな、電子ロックは生きてる。番号が分からないと入れない」

鍵が生きていることを確認すると、全員ため息をした。

「どこでも廃屋は簡単に入れる、なんてワケないもんねぇ」

「上は? 」

敦子が突然ライブハウスを見上げなら言った。

「そう、天窓とか、こういうコンクリート物件って、天井ガラスだったりとかしない? 」

そういえば俺が閉じこめられたライブハウスのグレンチェッカーも、天窓から光が差込んでいた。

そういう施工もあるかもしれない。