「1日を幸せにするのも不幸にするのも、モチベーション次第だろ。とにかくそれ、なくすなよ。高いんだから」

「なくすわけないじゃん!」

敦子は言って、箱を受け取ってそれで俺の左腕を叩いた。

「痛……ッ」

「ありがとう、潤!」

敦子は胸元を見ながら、大切にするよと続けた。

「……そんな風に笑えるなら、ちゃんといつも通りでいろ」

「うん」

「歌が聞こえたって、お前に俺の声が届かなくなるわけないだろ?」

「うん!」

敦子は言って笑った。

花のような笑顔。

敦子が、がんばって作り上げてきた笑顔だ。

壊したくない。

「……お前はやっぱり、笑ってた方がいいよ」

「この笑顔は、潤がくれたんだよ」

敦子は自慢げに笑った。

「潤が私に教えてくれたんだよ。敦子は笑ってた方がいいって。大半は潤が、泣かせてるくせにね? 」

敦子は笑って、駐車場の奥で、ライトを付けてこちらを伺っている霧島悠太と堀口俊彦に大きく手を振った。

「潤はやっぱり、譲れないなぁ」

敦子は一呼吸して、涙のうすくたまった瞳を擦った。

今度は本当にマスカラが落ちた。