「長谷川さんの家、行くんだよね、行きながら話す」

敦子は昇降口まで急ぐと、下駄箱からローファーを出しながら向かい側の俺たちを急かす。

「千恵ちゃん、呪い避けの待ち受けとか落とした?」

「うん、持ってた……」

「じゃあ、効果ないの? あれ」

「敦子、それでお前の話ってのは何だ」

クラスで言うのをやめた件を聞こうとすると、敦子の足が止まった。

「弓道部の……死んじゃった甘川先輩の彼女が、うちの部長だって言ったでしょ?」

「森先輩?」

山岡の言葉に、敦子が頷いた。

女子ってどうしてこう山ほど人名を覚えられるんだろう。

「先輩のケータイにも、出てたんだって、死の待ち受け」

「うそ……!」

「ほんとだよ、千恵ちゃん……相談受けたんだ、私……」

敦子は再び歩き出す。

山岡もワンテンポ遅れて歩き始める。

俺は、動けなかった。

「……本当かよ……」

敦子は振り返って、頷いた。

「先輩もね、甘川先輩のことがあったから、呪い避けの待ち受け、持ってたんだって。でも……意味無かった……」

口の中がすごく乾いてきた。

これで本当に、山岡や先輩が死んだら

本当に「死の待ち受け」じゃないか

「沙織が心配……」

山岡の声に、はっとして顔を上げる。

そうだ、急がなくては

「長谷川の家、急ごう」

出遅れていた足を動かした。