「……すいません、霧島さん」

「……いいや、いいんだよ、ここまで……イロイロなものがハッキリとしてきたら、僕がいくら言ってもそれは身内の庇護欲としか聞こえないのは、確かだから」

霧島悠太は、窓の外の真っ黒の海

そして空の星のように輝く水面へ視線を投げた。

「僕は死の待ち受けが表示されてない。だから本当の意味で、飯島さんたちの恐怖は分からない」

地図を片手に、霧島悠太は儚く微笑んだ。

泣きぼくろが、寂しげに歪む。

「君だから言うよ。僕は、僕のケータイに死の待ち受けが表示されて欲しかった。たとえそれが狂気に満ちていたとしても、七海に会いたい。そして助けてあげたい。七海は僕の大切な……」

色素の薄い瞳が、長い睫の下で翳る。

「大切な……人……だから」

言い濁った言葉が、本当は何を訴えたかったのか分からない。

「飯島さんとは、イトコなんだってね。僕はてっきり恋人同士なのかと思ってたよ」

「違いますよ、ただのイトコです」

「飯島さんはそう思ってないよ、君のことを愛してる」

霧島悠太は苦笑して、湿布の貼られた頬を指で指した。

「霧島さんなら、家族を特別な感情で愛することができますか?」

俺は返事を待つ前に言葉を続けた。

「俺は無理だ、そういう答えに辿り着きました。でも……」

「でも?」

「敦子の笑顔くらいは、俺が守ってやらないといけないって思ってますよ」


「……自分に与えられた、最大の力を持って守ることを、愛するって言うんだよ」


霧島悠太は言って、微笑んだ。

「行こうか、ライブハウス探索、再開しよう」