「もうやめてくれ、蔵持、山岡が何したって言うんだ! 山岡を……殺さないでくれ!」

俺がその言葉を終えた直後。

蔵持七海は掴んでいた山岡の首をそのまま高く引き上げた。

「…う……」

ぶらん、と山岡の体が宙に浮く。

月が重なって、蔵持七海の腕が牙のように山岡首に食い込んでいた。

もう片方の手で、蔵持七海は定期のポケットに収まっていた短冊状のプリクラを引き出した。


まるで、飛び出しナイフのようにプリクラが鈍く輝いている。


「やめ……やめ……て」

山岡の黒い瞳に突きつけられるその鋭角の鈍い光に、俺はもう一度声を上げた。


「蔵持!」



「離してぇー!」



山岡は思いきり力を振り絞って、定期を振り叩く。

飛んでいった定期を目で追うように、蔵持七海は山岡を思いきりガラスへと叩きつける。

軽くバウンドした山岡の体

スカートのポケットからケータイが落ちて、開いた。


真っ黒の待ち受け画面が

赤い血文字で飾られていた。


「私……電話なんか、しない」

山岡の声が、くぐもって聞こえる。

「蔵持さん……私は……大好きな人を、殺したりしない」

山岡は震えながらケータイを拾い上げて、ボタンを押し始めた。