センサーに感知されなかったのかと、天井を見上げるが、赤いセンサーが点滅して、俺を認識しているのが分かった。

ドン、と中の山岡がドアを叩く。


「開かないの」


くぐもった声、危機に怯えた声が鼓膜を震わせる。


まさか


「こっち側も、外の自動ドアも、閉まって開かないの!」

うそだろ

ガラスの向こうで、山岡が不安そうに左右を見つめている。

俺は一度、力を込めてガラスを叩いた。

だが、ビン、と音が全体に響くだけで、開かない。


下だ。

たしか自動ドアには下に解除の鍵穴があって……


俺がかがむと、山岡がドアへ体当たりした。

「山岡……ちょっと待て、壊す前に警備員呼ぶから」

鍵は簡単にこじ開けられるものではない。

判断を付けて立ち上がろうと視線を上げる。






赤い


赤い線がガラスを滑っている。

線は2筋。


お互いどちらが先に地につくか競うように

少しとろみのある赤い筋が、ガラスを滑る。