「…………なんで?」

突然の言葉に、俺は首をかしげた。

「山岸が、死の待ち受けで死んだとでも思ってる?」

消え入るような山岡の声は、細くなって雨音にかき消される。

「今日、突然私のケータイの待ち受けが変わったの」

俺はシャーペンを回していた手を止めた。

「写真に赤い血文字みたいので、数字が」

山岡は下を見て震えていた。

俺はただ、瞬きだけしてその姿を見ていた。

「どうしようっ……本当だったら、あの噂」

恐怖を抑えられないのか、山岡は声を上げた。

図書室の奥にいた数人が、こちらに迷惑そうな、興味深な視線を向けた。

「突然って、ほんとに何もしてないのか?」

「してない、してないよ昨日まで、沙織と絵里子と私の3人で撮ったプリクラが待ち受けだったの。今日朝起きてケータイみたら、急に変わってて……!」

動揺を隠せない山岡は、泣きながら続けた。

「怖い、怖いよ黒沢君、なんでだろう、なんで私なんだろう」

手の甲で涙をこする山岡に、俺はポケットからハンカチを出して渡す。

まるで情報の整理ができない。

とりあえず落ち着かなければ、話が進まない。

「沙織にも相談しようと思ったよ。けど怖くて、黒沢君なら、絵里子の家であの待ち受け見ても動じなかったし、相談できると思って……」

山岡はハンカチに皺を寄せながら涙を拭いた。

落ち着いて話ができる状況じゃないな。

山岡が落ち着くのを待つ間、先に俺が落ち着かなくてはと冷静になるように努めた。

山岡が泣き止む頃には、夕立も止む。

ぽたぽたと雨粒が落ちていくのを、俺と山岡は静かに見つめていた。