目を開ける。

今度は「ちゃんと」目を開けた。

呼吸は重くない。


むしろ普段の生活で、息を重く感じることの方がおかしい。

天井を見る。


暗い音響設備がぶらさがっているライブハウスの天井ではなかった。


明るい、だが知らない天井。

「……どこだ、ここ」

「潤!」

聞き慣れたキンキン声と、ガシャンという派手な音が聞こえた。

視線を投げようとして、頭を動かすと激しい痛みがした。

「千恵! 潤が目覚ました! 霧島さん!堀口さん!」

声が外へと動いていく。

「潤……? 」

暫くして、控えめな声が横からした。

山岡の声だった。

「ここ、病院? 」

「そうだよ、よかった。本当によかった」

山岡は言いながら、顔に手を当てて泣き出した。

「今、何時? 俺あそこに何時間缶詰になってたんだ? 」

「夜の11時ちょっと過ぎたくらい……」

そのくせ明るい、と思ったが、煌々と蛍光灯が輝いていて、そのせいだった。

閉められたカーテンの向こうは、暗闇だった。


……暗闇


「黒沢」

堀口俊彦の声に顔を上げる。

よく見渡すと、病室は個室だった。