√セッテン

降りるたびに、空気が妙に冷えているような気がして、変な警戒心を煽られる。

ゴミが散乱している。

何かのビラやら、酒の瓶だか知らないが、汚い。

だがおかしなもので、日も差込まないのにゴミを苗床に、雑草は育っていた。

「生きようと思えば、どこでも生きれるもんだな」

思わず感想を口にしつつ、そのまま地下2階まで降りた。

案の定、ライブハウス・グレンチェッカーはすでに潰れていた。


入り口のドアノブを捻ると、普通に開いた。

真昼間からこんなとこで密会しているカップルや浮浪者……

ましてや犯罪者などいるワケはないと思うが、少し緊張する。


挨拶代わりに足元にあった缶を中へ蹴る。


音は遠くまで響いた。広いようだ。

足元のゴミを引き寄せて、入り口が閉まらないようにして中へ入る。

シンと静まりかえっていた。

ここには誰もいない。

なんとなく分った。


ここは階段より少し明るい。

地上の明かりを採る天窓があった。

だが小さくて、本当に足元が分るくらいの明るさでしかない。


だが、真っ暗な空間に比べればいくらか心強い。

中へ進むたび、革靴の底がジャリジャリと音を立てる。

割れたガラスなのか、風が送り込んできた砂なのかよく分らない。

「……けっこう寒いな」

半袖のシャツから出ている自分の腕に触れると、少し鳥肌が立っていた。