√セッテン

地図を片手に、古いビルを見上げた。

入り口にレトロな看板が出ているから、潰れてはいないのだろう。

今日6件目も不発だった。

ギシギシと危険な音を立てる階段を上りきり、強い日差しに瞳を細める。

女じゃないが、日傘が欲しいくらいだ。

次は路地を5つ挟んだ向こうか。

途中の自動販売機でオレンジジュースを買う。

額に並んだ汗を拭いてから、冷たいオレンジジュースで喉を潤しながら歩き続けた。

この辺りは古くからの町並みと、新興住宅地が入り交じっていて、道もごちゃごちゃとしてまるで脳みその中を徘徊しているような気分になる。

小道を挟んだせいか、途中から人とすれ違うことがなくなった。

次のライブハウスは、廃墟ビルという方が正しい。

3階の麻雀店が唯一営業してそうなくらいで、4Fは古びた不動産屋、2Fはよく分らない芸能事務所が入っていた。

そもそもどこにライブハウスの入り口があるのか分らず、思わず道路で立ちつくしてしまった。

車のクラクションに追い立てられ、道からビル側へと入る。

中に階段があり、地下への入り口があることに気づく。

正面にはポストがあって、テレクラのビラがめいっぱい詰め込まれていた。

あきらかに胡散臭い雑居ビルだ。


「……ライブハウス・グレンチェッカー」


ポストに書かれた名前を見ると、どうやらライブハウスは地下2階らしい。

エレベーターに乗る気にはなれず、非常階段を使って下へと降りた。

ビルの階段は寒かった。