山岸絵里子の事故死で騒然としていたクラスだったが

期末テストに向けて動き出した学校の波に飲まれ、次第に落ち着きを取り戻した。

期末テストが終われば、夏休み。

山岸絵里子の死を記憶の端に押し込んで、勉強との格闘の日々が始まる。

『3次方程式 2x3-3x2-12x-p=0 が異なる3つの実数解α,β,γ を持つとき、実数 p の値の範囲を求めなさい』


基本問題を解き始める。

シャーペンの頭をノックしながら、問題を解いていく。


pを移項して、グラフを書いてみる。

俺ってなんか……微分好きなんだよな

まぁ、微分っていうか

数学が好きなんだろうけど。


校舎の最上階にある図書室は、風通しがいい。

図書室は、シンとしていた。

持ち出していた参考書を棚に戻し、新刊の棚を横切る。


目に付いた新刊を手に取って立ち読みしていると、科学雑誌が目に入った。

『広まる恐怖、死の待ち受け画面!?』

サイエンス社が出している、自然科学雑誌『アトランタ』だった。


ナスカの地上絵のミステリーとかを特集しているのを、以前立ち読みしたことがあったっけ。

特集されているページは、さほど大きくはなかった。

213ページ目のモノクロページ

えぇと、記者は……霧島悠太

『N駅西口で高校生男女3名の遺体が発見された。
3人は閉店したクラブMの地下室で首を吊って自殺。
部屋は廃屋のため密室で、集団自殺とも噂されていたが3人の手に握られていたケータイ電話が、ある符号を導き出す……』

オカルトな書き出しだと思いながら、記事を読み続ける。

『3人のケータイの待ち受け画面には、不気味な待ち受けが表示されていた。血文字が描かれたものだ』