敦子と山岡が、激突して

昨日は大変な目にあった。

「……池谷美保は、気の強い子だよ。七海に好きな相手を譲るとは、僕は考えられない」

「それは俺も同意です、池谷は学校でもワガママな性格で通ってましたから」

たしかに俺の頭に記憶されている池谷美保も、河田の情報で固められていて、良いというには無理があるが。

蔵持七海は、親友と男、どっちを選ぶか

頭の中のノートを開いて

蔵持七海の性格を追っていく。

上から順に箇条書きされた蔵持七海の情報が組み合わさっていく。

俺が把握している情報だけで考えれば

蔵持七海は、どちらも選べないだろうという答えが出た。

蔵持七海にとって、池谷美保がどれだけの存在か安易に想像できる。

たとえ、サークルの看板扱いでも、いいように使われていたとしても

孤独の海で溺れていた蔵持七海を、すくい上げたのは池谷美保だ。

池谷美保を裏切って、男を取るとは到底考えられない。

霧島悠太もそれに同意した。

「あと……可能性としては、蔵持が吉沢を好きだって思いこみをして景にメールしてた可能性もあるよな」

「好きな相手を七海に取られるから助けて? と?」

「そう」

俺は首をかしげた。

池谷美保は蔵持七海の美しさを知って傍に置いてた。

俺のイメージだと、利用していたとしか考えられないが

池谷美保は池谷美保なりの友情や保護欲で蔵持七海を可愛がっていたに違いない。

「そうだよ、親友だからこそだ」

従順だと信じていた親友が、牙を剥いた現実。

彼女はその現実を、裏切りと捉えたのか。