「なんか最近さー死ぬ人多くない?」

昇降口の向かいで、女子グループの声がする。

「死の待ち受けじゃなーい? あれ、マジで流行ってるっぽいよ」

「やだ、やめてよー」

話はエスカレートしていたが、全て聞くことなく昇降口を出た。

立幸館高校経由のバスへ乗り込んだ。

白くぬけるような空を見る。

白を見ると、蔵持七海を思い出す。


フラッシュを焚くように、パッと花が咲くように

蔵持七海の顔が頭いっぱいに広がる。


CoccoのCDを借りて、蔵持七海が歌った歌詞を見た。

その歌詞の節々には、狂気にも似た本性が織り込まれて

霧島から聞いた蔵持七海の性格というより

俺たちが直面していた、√の女

あれの本質と対峙しているような気になった。


普段はおっとりとしていたという、蔵持七海

死を運びながら、救いを求める。

なにか食い違っておかしいと感じていたのは、その性格の差異にもあった。

二重人格、というのはおかしい推理かもしれない。

本音と建前というべきだろうか。


七海は、人を殺したりしない

霧島悠太が断言した言葉。


女って生き物は、敦子しかり、山岡しかり、掴みきれない存在だから

俺が死ぬほど分析して数字にしても、あっさりとそれを踏み越えて行ってしまうんだろうけど。

蔵持七海は……もっと違う線を飛び越えてしまったのだろうか。