「死の、ってあの待ち受けの噂?」

俺が聞くと、長谷川沙織は頷き、ケータイを置いた。

「でも、噂でしょ?本当だったの?冗談だよね」

長谷川沙織はひどく動揺していた。

整った白い顔をしているとは思っていたが、今日は格別に白く見える。


俺は待ち受けを覗き込むと、ボタンに触れて画面を明るくした。

画面はノイズの入った写真が貼ってあった。

その上から、まるで走り書きしたように"0"と数字が書いてあるように見える。


敦子が話していた噂の待ち受けの特徴と全く同じ。

女子の待ち受けにしては、ずいぶんとイメージからかけ離れたビジュアルだ。


「その、画面がどうかしたの?」

山岸絵里子の母親は不思議そうに俺たちを見ていた。

「あ、いいえ、ちょとビックリしただけです……」

ケータイを山岡と長谷川沙織に渡した。

おばさんの願いに応えて、2人はメールボックス内のメールを探していた。

「あら、景ちゃんからのメールだったのね……」

「お友達ですか?」

「えぇ、絵里子の先輩で……絵里子がもういないなんて、おばさん、伝えられないわ……あんなに仲がよかったのに、もう……」

女性陣の会話を放置して、待ち受けのことを考えていた。

ノイズの入った写真を、加工したような待ち受け画面……

血文字のような数字

その後はあまり集中できずに、ただ、ぼおっと山岸絵里子を見ていた。

屋上で彼女が見せた、不安そうなあの顔を思い出しながら。