「助けてあげられたら、死の待ち受けも止まるんだろうね……」

敦子は神妙な顔つきでケータイを手に取る。

「きれいなコだったよね、霧島さんが夢中になるのが分かるなぁ、私も髪伸ばそうかなぁ」

「敦子はそのくらいがいい」

「そう? なんか巻き髪も飽きたし、千恵みたいにショートボブにしよっかなって」

敦子は笑いながら続けた。

「蔵持さんはさ、好きな人とか、いたのかなぁ、告白されたら、あれだけ美人だし、絶対男は断らないよね」

「そうだな」

なかば上の空で頷く。

蔵持、という名前を聞くとそのたび頭が一瞬真っ白になる。

「あのね……」

白黒と反転の忙しい頭をよそに敦子が続ける。

「立幸館のキョウコ、覚えてる?」

「あぁ、お前に死の待ち受けの話教えた」

「先週頭に、自殺したんだって……電話してもなかなかでなくて、今日キョウコの友達から聞いたの」

「自殺……?」

「うん」

原因は?

と聞くのがとてもばからしいことのように

敦子の瞳がじっと待ち受けを見つめていた。

「もう耐えられない、もう抜け出せない、ここから出してって、そう言って飛び降りしたんだって」

敦子の待ち受けは、まっくらで、中心に細い血文字で"4"と書かれている。

あまりに画像が暗すぎて

画面には反射した敦子の顔が写っているように見えた。

「心の弱い人は、どんどん死の宣告を待たずに死んじゃうんだね」

「……」

「私も、失敗してたら今日、轢かれて死んでたかもね? それがきっかけになって自暴自棄になって、どんどん心の闇に埋もれていったかもしれない」

「お前は大丈夫だよ、俺がいるから」

「うん、潤がいるから……千恵も、みんなもいるから、がんばるよ」