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ケータイが鳴り、ポケットから拾い上げる。


『飯島』と待ち受けに表示されていた。

番号は家電だ。


「もしもし」

『あ、潤? 私!』

敦子の声だった。

声はいつも通り元気だ。

足の痛みはもう引いたのだろうか。


『今日の探索どうだった? 蔵持さんの情報とか、ゲットできた?』

「ライブハウスはダメだったよ。そう簡単に見つかるなら、警察なんかいらないしな」

『そっか……ちょっと気になってさ。ほら、千恵もいたから』

「…………」

『え? 何よその間、千恵大丈夫だよね? 幻聴とかないよね?』

「あぁ、それはないと思う」

遠く、山岡の家の方に視線を投げる。

坂を降りていくと、信号が点滅していた。

『明日は私も行きたいなぁ、人は多い方がいいよね』

「足、大事にしろよ。県大会あるんだろ」

『大丈夫だよ。飛んだり跳ねたりしなきゃいいんだもん』

「無理ばっかりすると、芙美叔母さんが悲しむぞ」

赤レンガの古い洋館が建ち並ぶ道を進む。

『でも、千恵も私も時間ないの。潤だって分ってると思うけど』

病院で焦っている、と敦子は言っていた。