「黒沢君も来てくれたんだよ、絵里子……」

長谷川沙織の声が潤んでいる。

悲しい輪唱を何もできずに見つめていた。

2人と入れ替えに、俺は山岸絵里子へ近づいた。

まるで寝ているみたいだ。

枕元に置かれた赤いケータイが目に入った。

よく見れば山岸絵里子の枕元には、他にも赤いテディベアが置かれている。

赤、好きな色だったんだな。

...♪...♪.♪

急に鳴り出した山岸絵里子のケータイに、驚いて身構える。

数秒ほど鳴ると、ケータイの点滅は終わった。


メールだろうか。

もうこのケータイの持ち主は死んでしまったというのに

なんだか急に悲しさが込み上げてきた。

もうメールを山岸絵里子が読むことはない。


「おばさん、その待ち受け……」

急に長谷川沙織が引きつった声をあげた。

届いたメールを確認しようと、ケータイを手にとった母親の手を遮る。

「待ち受け?」

「その、画面の画像のことです!」

長谷川沙織は言って画面を覗き込む。

「ち、千恵、この待ち受けってもしかしてアレじゃないの?死の……」

長谷川沙織の焦りようは半端じゃなかった。

俺はやっと、山岸絵里子からクラスメイトたちへ視線を返した。

「まさか……これがそうなの?本当に?」

「噂どおりじゃん……違ってたとしても、こんな悪趣味な待ち受け、絵里子が待ち受けに設定するわけないし」