約束の場所は、堀口記念病院前に作られた大きな公園だった。

入り口のベンチに座って、ライブハウス探索のメンバーへメールを送信する。

顔を上げると、山岡がいた。

「……お待たせ」

あきらかに、気まずそうだった。

ケータイをポケットにしまって山岡に視線を投げる。

微妙な間が生まれた。

俺も、山岡も、何か言おうとすると、タイミングが重なった。

「……」

子供が、サッカーボールを追いかけながら、園内へ走っていく。

親子連れや、老夫婦の散歩する姿を見送ったころ、山岡が切り出した。

「学校では、ゴメンね」

「謝ることじゃないだろ」

「うぅん、突然あんなこと言われたら、ビックリするよね。潤の気持ちとか、全然考えてなかった」

山岡は、垂れた髪を耳に掛けながら続けた。

「私も、言っておきながら、なんであんなこと言っちゃったんだろうって、ちょっと冷静になったら恥ずかしくなってきちゃった」

俺は視線を手元の手に向けたまま、黙って話を聞いていた。

「敦子と、ケンカしたんだって?」

「え、あ、敦子から、聞いたの?」

「敦子も試験に来なかったんだよ。連絡したら、山岡とケンカしたって言ったから」

「そっか、敦子、試験……」

山岡は単語だけ口にして、視線を地面へ投げた。

「敦子、何て言ってた?」

不安そうに俺に聞いてきた。

「俺からは、言いにくいけど。なんか、自分も悪かったけど、って言ってた」

「……」

「敦子は不安だっただけなんだよね」

山岡は手を組んで、続けた。