病院に運び込まれた敦子を確認して、ケータイを開いた。

.♪♪.♪..♪♪♪

着信があった。


山岡だった。


「……」

「もしもし」

『あの……や、山岡です。着信があったから。発信しちゃってごめんなさい』

「いいよ、俺が先に電話したんだし。山岡、今家?」

『うぅん、塾の自習室。今日はライブハウス一緒に探しにいけないかも』

「敦子がいるから?」

『…………』

「ちょっと話しよう。山岡は俺に会いたくないかもしれないけど」

『会いたくないなんて、そんなことないよ。そんなこと』

電話の向こうの山岡の声は、焦って聞こえた。

「じゃあ、堀口記念病院のとなりにある、隻ヶ丘公園の入り口で待ってる」

ピ、という電子音と共に通話を終える。

ケータイの電源を落として、敦子の元へ向かった。

「潤」

待合室で、壁に体を寄せていた敦子が、俺に控えめに声をかけた。

「看てもらった?」

敦子の意識に問題はないらしい。

救急車に運び込まれはしたが意識もはっきりしていた。

「うん、今ね、処置待ちなの。痛くないよ」

「はぁ、っとに、前見ろよ、本当にびっくりした」

「ごめん……」

「逃げたがらってハッキリすることか? どうやって現実と向かい合うか、それが俺たちに一番大切なことだろ?」

敦子は病院奥を目を細めて見つめた。

「そ、だよね」

「敦子は、今のままでいいんだと思ってた。それで気がついたら俺とか忘れて、誰か河田みたいな奴とつるんで」

「今のままも、嫌じゃない。だけど今の私たちって、不安定すぎるよ」

俺の言葉を敦子が切った。

また、間が生まれた。