「死の待ち受けが出なかったら、千恵とはこんなに話すことなかったよね。潤にとって、私がイトコだからこういう関係なのと同じで……」

敦子の早口は聞き取りにくい。

「潤は千恵のこと、好きじゃないよね、親切心だよね? 千恵は潤の特別なんかじゃないよね?!」

頭に入ってくる声がまるで、ブレーキ音みたいだ。

その音を聞くので精一杯で、答えられない俺を見て、敦子は何かを勝手に解釈した。

「もうやだ、ほんとに……死んじゃいたいよ!」

敦子はそこまで言って、コンビニの裏から飛び出した。

敦子が飛び出したとたん、車が駐車場へ乗り出してきた。


一度、大きなクラクションが鳴る。

敦子がそれに気づいて振り返る。


夏の日差しが、敦子の顔に降り注ぐ。

「あつ……!」

警告の鐘を鳴らしたつもりだった。

だが間に合わない。


敦子の目の光りの中

俺の目の光りの中

運転手には敦子の全身がくっきりと瞳に焼き付く。

その数秒後、敦子の体が車に弾かれた。