√セッテン

「やま……」

俺は保健室受験だから、と言おうとしたが、山岡はそのまま視線を逸らした。

「ん? 山岡? どうした」

俺を追い越してクラスへ戻ろうとする山岡を止める。

瞳からはじわじわと涙が浮かんできて、ついには涙は頬から落ちた。

「おい……大丈夫か?」


「離して」


山岡は叫ぶと、俺の腕を強引に引き剥がして女子トイレへと走り込んだ。

何かあったのだろうか。

いぶかしげな視線を向けていると、丁度河田がクラスから出てきた。

山岡の様子がおかしいことを伝えて、俺は保健室へと向かった。





保健室に敦子はいなかった。


山岡も敦子も、どうかしたんだろうか。

「飯島は保健室受験のはずだけど。クラスで受けるのかな。聞いてる? 黒沢」

「聞いてません。先ほどクラスを覗いたら、飯島はいませんでした」

「おっかしいね、でもま、時間になったら始めるから。飯島は再テストだね」

あっさりと保健医の若生は言って足を組んだ。

俺は俺で、シャーペンを出して試験準備をはじめる。

カチ、とノックをして芯を出す。

目を閉じて、頭の中に整理した英語Ⅱの教科書とノートを開く。


「んじゃ、始めるよ。60分、時間配分をちゃんとね。はい、はじめ」


回答用紙をめくる。

自分との対峙のスタート。


状況が分らないままだったが

試験が終わったら敦子を捜しに行かなければ

頭の片隅で、この後のスケジュールを回しながら、すり減った芯をノックでさらに前に出した。