通話を終えてダイニングから部屋に戻ると、笑い声が聞こえた。


そうだ。


敦子と山岡がいるんだ。


寝る前の会話を思い出しながら、ドアノブを捻る。

「おい、お前ら何笑ってるんだよ」

「あ、起きたんだね。てか、潤てば寝過ぎ」

敦子は俺の机にノートを広げて、山岡と対面していた。

「大丈夫か?山岡。こいつのバカは筋金入りだろ」

「そんなことないよ。ちゃんと行き詰まってるところを指摘してあげれば、答え出せるし」

「そもそもさ、千恵、なんでこれ形容詞なの? 過去分詞とかにはできないんだよね」

敦子は山岡に英語を教わっていた。

横から敦子に聞かれて、山岡はノートに視線を戻して丁寧に説明を続けた。

敦子相手に根気のいる作業だ。

「ちょっと、潤!静観してないで潤も教えてよ」

「2人から同時に教わって分るのか、お前は。俺、自分のテスト範囲やるから」

筆記具を手にして、ダイニングへ向かう。


1人になるのが危ない、という話をしたとき

敦子が手を挙げて「今日、家1人なんですけど」と言い出した。

試験期間中で山岡の家で人を泊めることなどできない。

半自動的に敦子はここへ泊まることになったのだが。

「じゃあ、千恵も泊まろう。千恵がカウント的にいつ何が起きるか分かんないもん」

敦子の短絡的な提案を、山岡があっさりと承諾した。

だが、しかし