『池谷とか、吉沢とか、蔵持には中学からの友達もいたし、彼女はその友人関係で十分満足していたみたいだしな』

「そういえば、池谷の作っていたサークルに、蔵持七海は入っていたんですか?」

『入ってたよ。アイドル的な立ち位置で。蔵持七海が入ってるから、もしかしたら仲良くなれるかもってサークルに入ったバカな奴もいたって話だからな』

もちろん、景づてに聞いた話だが

堀口俊彦は声のトーンを少し落として続けた。

『でも、突然休学になってな。行方不明になった、みたいな噂は聞かなくもなかったけど。ちょっと前にも入院してたとか聞いてたし、休学になる奴の噂なんて、たいがいそんなもんは派生するし、気にも留めなかった』

「…………」

話を聞きながら、頭の中のノートに書き留めた要項を整理する。

蔵持七海は、クラスでは孤立していたようだ。

中学時代からの友達にベッタリ……というところか。

「歌は?」

『歌?なんのだ』

「蔵持七海の歌、知りませんか、彼女は音楽活動してるんです」

『それは初耳だな。蔵持が人前に立つのか、意外だな……でも、歌って……まさか』

「そうです、渋谷さんや森先輩たちが聞いた幻聴に、歌がありましたよね。俺は聞いてませんが、俺は彼女の歌じゃないかと思います」

『蔵持の歌……』

「それで、ライブハウスの抜き出しの状況は……」

『となり駅までの分、とりあえずリストアップできた。結構多いぞ、明日、時間あるか』

「えぇ、なにせ試験期間ですから、午後はフリーですよ」

堀口俊彦は小さく笑った。

「3年になってもその余裕だったら、俺がグーでなぐってやるからな」