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電話が鳴ってうっすらと目を開ける。

気が付けばもう夜だった。


いつの間に寝ていたんだろう。

待ち受けを覗くと、着信は固定電話からだった。

「はい、黒沢です」

『立幸館の堀口だ。どうした、電話を取るのに時間がかかったな』

電話の相手は堀口俊彦。

冷やかしを含んだ言い方だった。

「いえ、寝てました」

中二階から、鋼の螺旋階段をゆっくりと降りていく。

ダイニングではテレビが点けっぱなしになっていた。

『おいおい、余裕だな。西高は今、試験期間じゃなかったか?』

堀口俊彦は軽く笑って話を続けた。

頭はぼんやりとしていたが、用件はスラスラと頭に入っていった。

『蔵持七海?あぁ、俺と同じクラスだった。今、休学中だ』

蔵持七海の話題を振ると、意外なレスポンスが返ってきた。

詳細を告げると、堀口俊彦はうなり声を上げる。

『そんな大事になってるなんて話は聞いたことがない。そもそも蔵持は……なんというか、近寄りがたい』

堀口俊彦も、番長風味で、普通の人は怖いと思うけど、と言うと、彼は笑った。

『俺がどうこうっていうより、お前に似てるな』

「俺に似てる?」

『第一印象が、だ。自分の持つ、ある特定のモノ以外には興味を持てない。こっちからすれば、扱い方が分らない、そんな感じの空気がある』

「…………」

『少なくとも俺は、触れがたかったな。彼女の世界は完結してるみたいだったし、周りは誰も干渉しなかった。
変な言い方だけど、蔵持はいるだけで花みたいなもんで、変に話たりして、彼女のもつ独特の空気を壊したらマズイ、っていう感覚があったのかもしれない』


……あの、焼き付けられるような白

蔵持七海を

堀口俊彦やクラスの人間は距離をあけてしか見つめられなかったんだろう。


あまりにも白すぎて。