「最近、夜とか、寝れてる?」

「え? ……んーちょっと、うなされたり、する、カナ」

「私ね……最近、夜に同じ夢を見るの」

山岡は真剣な表情でそう切り出した。

「夢?」

「そう、怖い夢」

「……蔵持七海が出てくるとか?」

俺の問いに、山岡は首を横に振る。

「逆に、人はだれも出てこないの。たった1人で、暗闇の中にいる」

山岡の言葉に、敦子と俺は目を合わせた。

「毎日死の待ち受けを見てるせいで、それが夢に出てきたのかもしれないけど」

山岡は言って続けた。

「フローリングのまっくらな部屋にいて、私は一生懸命そこから抜けだそうとする」

「………」

「声も外に出なくて、誰も助けてくれなくて。……出口を、一生懸命叩き続ける」

叩いて、叩いて、その動きがスローモーションになって

やがて自身が暗闇に飲まれてしまうという。

「助けて欲しくて、助けて欲しくて、泣き続けるの……私」

「そんな夢、いつも見るの?」

敦子の言葉に、山岡はゆっくりと頷いた。

「それ、死の待ち受けとリンクしてる可能性もあるな」

俺は立ち上がって、死の待ち受けリストを広げた。

"15"、"6"と続いてフローリングの空っぽの部屋が死の待ち受けには表示されていた。

山岡はそれを夢に見たのだろうか。

「ここ、もうライブハウスだと見て間違いないよね」

「カウント"7"で照明器具も映ってたし、間違いないよ」

山岡が敦子の言葉に応える。

「蔵持七海がボーカルなんてやってたなら、関連性もある」

「でもこれだけの特徴じゃ、全然どこだか分らないよね」

「そうなんだよ。フローリーングでこんな機材があるところなんて、ライブハウスとしては基本設備だろ?心当たりをリストアップしてもらってはいるんだけど」

「誰に?」

「堀口俊彦。霧島悠太っていう線もできた。そこから詰めていくのもありだ」