√セッテン

「敦子、どうした?」

なんか、イライラしてんな。

「……別に、なんでもー」

「敦っちゃん、もしかして女の子の日だったりして?」

「河田君、私とキャッチボールしたいの? 顔狙うからね」

駅のホームから次発を待ちながら、蔵持七海のことを考えていた。

行方不明になった、蔵持七海。

彼女は死の待ち受けを発信して、助けを求めている。

助けを求めながら、待ち受けが表示された人物へ死を与えている。

そんなことをしたら、誰も助けにいけないじゃないか。

相反する答えに、首を捻る。

やはり、蔵持七海以外の何かが、死の待ち受けと関わっていると見た方がいいのか。


「死ぬから……お前も死ね、か」


なんだろう、この言葉のやるせなさは。

敦子が顔を覗き込んでくる。

「潤こそどうしたの? オレンジジュース、足りてる?」

「足りてる。さっき飲んだ」

俺の言葉に、何故か全員笑った。

電車に乗り込むと、休日の夕方のせいか少し混んでいた。

「敦子、夏期講習とか受ける?」

山岡の言葉に、敦子がぎょっとした。

「えっ、受けないよぉ!千恵が言ってるのって短期とかじゃないよね」

「うん。下旬から8月いっぱいの。私、課外で英検対策のも受けるんだけど」

「うー、千恵とは住む世界が違うよぉ、一応お母さんが短期で1教科でもいいからやれって言ってるんだけど、部活もあるしさぁ…ぶっちゃけ…やだ」

「ソフトボール部って大変だもんね」

「うん、もー夏はバリバリ行くよ!気合い入れてザックリショートにしよっかな!千恵とお揃いとか」

「え?私と?」

「可愛いよね、千恵どこで切ってもらってるの?」

女子2人の会話をぼんやりと聞いている。

が、右から入って、左に抜けていく。