√セッテン

霧島悠太と別れる時に、ビデオを渡された。

何だ?という顔をすると、彼は「七海のライブ映像だ」と言った。

霧島悠太は、また、と言ってハンチング帽をかぶり直して繁華街へと消えていった。

手にはビデオ、カバンにしまうと、駅へと足を進めた。


♪♪...♪.♪♪


ポケットで震えた電話に少し驚く。


過剰な反応をしすぎだ、と思いながらも電話を取った。

『もっしー? 康平でーすぅ』

「河田か、何だ。何か分ったことでも……」

『黒沢今どこいる?』

「二条駅、どうかしたか?」

『今さ、駅でね、敦っちゃんと、山岡ちゃんと一緒なんだけど』

どういう組合わせなんだ、と言いたかったがそのまま流した。

『それで、お前今時間あるなら出てこれねぇ?』

オススメの参考書がどうのこうの、と話す河田に、暫く黙してから続けた。

「丁度よかった、全員俺の家に来い。さっき、タナトスの館の管理人、霧島悠太と会って話をしてきたんだ。その報告もしたいし。ビデオもらったんだ」

『何のビデオ? ホラーとか言うなよ?』

「違う、ライブビデオ、だそうだ」

『らいぶびでお?』

話していても埒が明かないので、駅ビルの本屋にいた3人をホームまで呼び寄せた。

「まぁ、話は家でするから。敦子は大丈夫だよな。どうせ休み明けの試験も捨ててるだろ」

「捨ててないよっ!でも見るっ!」

「山岡、試験もあるし、お前は無理しなくていいぞ」

「大丈夫、行く。火曜日は得意教科だから」

それに、と言いかけて、山岡は言葉を飲み込んだ。

その様子を、敦子が無表情で見つめていた。

「敦っちゃんどうしたの? なんか心配事?」

河田の反応に、敦子がウッサイ、と裏拳をかます。