√セッテン

店内に流れていたジャズが止り、次の曲が始まる。

「表示されると死ぬ、突然表示される、死をカウントダウンする、15日……そんな断片的な情報で、頼りにならない。そのうちサイトにはあきらかなデマ情報で溢れて情報を収集する場所ではなくなった、七海との関連性も掴めずにいて……」

霧島悠太は言って微笑んだ。

「キミが話してくれた情報はとても力になった」

「死の待ち受けは」

「確実に、七海が関係してる。七海が、助けを求めてるんだ」

テーブルに広げられた

死の待ち受けを撮った写真一覧

霧島悠太は一覧に視線を置いたままだ。

「蔵持七海については、俺はあまり情報を持っていないんですが」

「そうだね、アルバムを見た程度、だってね」

「はい。まるでハーフみたいな、日本人離れした美しさですね」

「彼女はハーフだよ。でも彼女の魅力は、外見じゃない。彼女の美しい、切ない、歌声なんだ」

……歌が聞こえる

死の待ち受けが現れて、カウントも0に迫っていた山岸絵里子や森先輩、渋谷景も言っていた。

その歌声は……もしかして

蔵持七海の歌なのか

「彼女は歌なら自分を表現できるって言っていたよ。人前に出たり、コミュニケーションをしたり、人と接点を持つのは苦手だけど、歌なら自由に表現できるって」

「…………」

「彼女はカバー曲を歌わせるだけで終わる存在じゃないと僕は思った。これでもバンドをやっていたから、音の良し悪しぐらい分っていたつもりだからね」

「彼女はどんな歌をカバーしていたんですか?」

「英詩のものや……多くはCoccoだよ。本人と思わんばかりの歌声だ。良く似てる」

霧島悠太の笑顔が、ふと緩む。

「まぁ、人の心を詠う、深い詩を好んだかな」

話題を切り替える。

「彼女が関係をしていて……助けを求めているにしても、なぜこの待ち受けが人を殺す必要があるんでしょう?」