√セッテン

プライベート?

死の待ち受けにそこまで興味があるのか

「必ず最終稿をキミに見せる」

「……」

「共同戦線だよ、悪くないと思うけどね」

「分りました。関係者の名前や個人を特定するような記述さえなければ、他まで俺が言及する問題じゃありませんし」

「お待たせ致しました」

霧島悠太と視線を合わせた途端、割って入るようにしてウェイターがブレンドコーヒーとオレンジジュースを持ってきた。

お互い視線を飲み物に移すと、喉を潤す。

「89点」

霧島悠太はコーヒーにそう点数をつけると、微笑んだ。

一瞬だけ彼の顔に無邪気な微笑みが浮かぶと、気を張っているこちらも少しだけ緩む。

俺はオレンジジュースを飲んで、たしかにシャノアールのオレンジジュースとは違う、と黙って頷いた。

「さて、杯は交したことだし、キミの見てきた話をしてくれるかな」

霧島悠太は椅子に座り直して、右手にペンを持った。

手帳は俺と大きさは違うが同じブランドのモレスキンだった。

メモを取る気、満々というところか。

「まず分っていることからお話しします」




「…………」


霧島悠太はモレスキンの手帳に走らせるペンを止めて、深くため息をついた。

タバコを吸う手も止めて、額に手を当てる。

うなだれているようにも見えた。


「以上が概要です」

「じゃあ、今もっとも危険な子は、山岡さんということか」

「そうなります。あとはそれについで堀口、飯島です」

オレンジジュースはもうからっぽで、六角形の形をしていた氷と解け合って、薄いオレンジ色になっていた。

「あと6日、か」

霧島悠太は瞼を落として考えに耽っていた。

山岡の待ち受けには、血文字で"6"

暗いフローリングがそこに映っていた。